Act4.“試練”と呼べない寺院あさり


“始まりの寺院”に5人が足を踏み入れた途端。
「っぎゃ―――――ぁぁ!?」
夏樹の可愛くない叫びと共に、5人はそれぞれ別の方向へ風で飛ばされていった。


「あいたたたたたぁ……。突然すぎるよ、展開が…」
………………。
ハナが顔を上げると、そこには頂点に大きなクリスタルの入った杖と、異様にごちゃごちゃした服があった。
「…こまかっ」
服を肩の部分を掴んで広げる。“細かい”のは装飾だ。
杖、ということは。
「……魔法?魔法=…アッ○ちゃん。あっ、○ッコちゃんはコンパクトだから、サ○ーちゃんだね。うん」
なんだか一昔前のキャラクターを思い出してみるハナ。古いよ。
「持ってくだけ持ってかなきゃ、なんだよね〜…」
ハナは服と杖を持って台座をあとにした。


一方、サカキはというと。
「あっ、あそこに薬入れるのに良さげな袋とローブ発見vv今、制服海水まみれだしね〜vv」
サカキは台座からその2つを取り上げるとローブを上から羽織り(ローブは布でできたレインコートのようにも見えた)、袋に毒…もとい薬を入れ直して、とっとと部屋を出て行った。


次に5人が会ったのは入口前。5人はそれぞれバラバラの状況だった。
ハナはそのままの服で杖を持っている。あの服は左腕に掛かっていた。
榊はあったものをちゃっかり手に入れ、身につけている。
蒼は服を着替えているが、両手に台所の凶器たちを抱えたまま。
真岬は何故か髪や服がバサバサのボロボロ、夏樹は剣を持った状態で息を切らしていた。派手に。
「真岬…服、着替えたら?」
「そう、ですね……じゃあ…」
そう言い残し、真岬は小部屋を見つけて入っていった。
サカキが今度は夏樹に声をかけた。
「夏樹?なんで今だに息切れてんの?」
「…逃げてきたんだよっ」
「何から」
ハナが訊く。
「…怪物と服から!俺ぜっってーあの服は着ねぇ!制服でいい!!」
「よっぽど恥ずかしいもんやったんやな…」
蒼がこそっと呟いた。


丁度真岬が着替え終わったであろう頃、夏樹が爆弾発言をした。
「…敵に追っかけられて、逃げてきてそのままなんだけど」
「おい―――――!!!?」
サカキがいつもの夏樹の代わりに叫んだ。
「それで息切れてたんだー」
ハナはあまり気にしていない。気にしろ、少しは。
「そろそろ来るかな…ぁ」
夏樹はあはっ、あはははっ、と明後日の方を向いて乾いた笑いで現実逃避していた。
「おーい…」
蒼が呼びかける。次の瞬間。
真岬がこっちに走ってきた。
後ろにでっかいクモをつれて。
「きた―――――ッ!!!」
夏樹が叫ぶなり、逃 げ た。
「「「「え―――――!!!!」」」」
他の4人は叫んだ。逃げるんかい?!みたいな。
「嫌だもの―――――っ、あぁんなでっけぇクモなんか―――――ぁ!!!」
「さばいたろか―――っ?」
「グロイこと言わな―――――い!!せめて毒殺でさっくり―――」
「お前の方が非道いわ―――――ッ!!!」
逃げていなければ、サカキと蒼の頭に夏樹の水平斬りが入っただろう。
「冗談v」
「こんな時に冗談?!ふさけんなぁあああぁ―――――ッ!!!!」
夏樹が必死にわめいている言葉の意味は、くもさんにはわからなかった。




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