Act2.姐様は歩く毒物


「えぇい、この際どーでもいいっ!!殺れサカキ!!」
「嫌な言い方だね…」
ハナが独り言を呟いた。

で、数分後。

「はい終わり――vv…どうした?皆して固まっちゃって」
「お姐様怖――」
夏樹がやっとのことで声を絞り出す。さっきの威勢はどうした。
「結果が良ければ良いんだもんね、さて街をさがそっか――…」
目をあからさまに背けて自己暗示するハナ。
「す、凄いですね〜サカキ先輩…」
乾いた笑いを貼りつかせて何とかそれだけを言う真岬。
「あはははは……」
蒼に至っては、笑うことしか出来なくなっている。何を見たんだ、あんたらは。

少女御一行は街を探すため、地道に歩くことにした。
ここが異世界だということは身に染みて分かった。それでも街くらいは有るだろうと思ったためだ。
「街、無かったらどうする?」
ハナが後ろから訊いてくる。
「それは流石にヤバいよな〜」
夏樹は苦笑する。
「薬にも限りがあるし…私だけが戦うなんて」
サカキが溜息をつく。
「そんな面倒臭い」
「オイ」
そっちかい、と夏樹は訂正を入れさせる。
「……。あれは…!」
蒼が1番に存在に気付く。
「漁村…?まぁ問題無いかなー」
ハナが目を細めて箇所を見つめる。
よく見ると、確かに漁村だった。壁には網が掛かっていて、その横には銛など、明らかに漁のための道具が揃っていた。
「これで何とかなりますね…」
真岬が安堵の息をついた。
「村が蜃気楼じゃないことを祈るぞ…」
夏樹はそれを切実に願っていた。

「まぁ、とりあえず幻ではナイよね〜」
蒼が周りを見渡す。ついでに網を触ってみる。
「それにしても、しらけてるなぁ、ここ…」
ハナも辺りに目をやりながら言う。
と、突然目の前に一枚の紙切れが転がる。わざとクシャクシャにしてあった。
「何だ…これは?」
夏樹が拾う。サカキが取り上げる。皆が覗き込む。そこには走り書きの文字があった。
《Go home,FooL!!》
「帰れ、馬鹿ぁ……?誰だ、こんなモン投げた奴ぁ!!!すみやかに出て来い!!」
「落ちつきなよ…」
蒼が夏樹を窘めかけた、その時。
ひょい、と数人の男の顔が窓から出てきた。全員、顔に驚きと希望を映し、顔面を引っ込める。
その後、どんがらがっしゃん、とか数々の嬉しそうな声とかが村中から響いてきた。
「な、何なんですか…」
真岬がちょっと引く。皆もちょっと引く。
散々浮かれまくった挙句、1人の男が進み出て来た。何度かあー、とか謎の言葉を紡ぐ。
次の言葉を聞いた瞬間、5人はまたしても固まった。
「おぉ、勇者様!!どうか、私達をお助け下さい!!」




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